ゲーム開発を前提としたVueとPlantFactoryの選び方 ~ Vue編

vue_eyecatch

e-on software社のVueは、CGを使用した大作映画のほとんどで使われてるといっても過言ではないくらいメジャーな景観作成ツールです。
特に遠景や空といった背景や、山や森等の自然を得意としています。

それらの自然に欠かせない木や花、植物全般を作成できるのが、同社のPlantFactoryです。

VueもPlantFactoryも基本的には映画のような動画で使用されることが前提の作りになっていますが、もちろんゲームの素材作りにも大活躍してくれます。

では、ゲーム作り的にはどのエディションを買えばいいのでしょうか?


まずVueですが、大きく分けて2つのプロダクトラインと呼ばれる製品群があります。

1つはCGプロフェッショナルライン。価格はレートによりますが14~20万くらいです。

これは一般家庭のPCなら1フレームをレンダリングするのに1週間かかるような超ハイクオリティな動画を目的としている商業向け製品で、個人開発では使わない機能も多く、価格的にも見合わないため除外します。
ただし、最上位のxStreamは3DS maxやMaya等の他のツールとの直接的な連携ができるので、それらを使用しているなら選択肢としてアリかもしれません。

もう1つはアーティストラインで、2~7万くらいです。
無料版もありますが、ほぼ何もできないので正直なところ入れる価値はないように思えます。試すならトライアル版の方がいいでしょう。

ゲームの個人開発では、このアーティストラインからどのエディションにするか迷うところですが、結論から言ってしまえば最上位のComplate一択です。

下位エディションは「あれもできないこれもできない」…となってすぐにCompleteに切り替えることになるでしょう。
幸いなことにe-onのサイドグレード(下位から上位へのライセンス切り替え)価格は単品価格の差額とそれほどかわらないので、まず下位から使ってみるといった買い方もあります。

しかし単に地形を作るというだけならVueは高機能すぎです。Unity標準の地形エディタで十分でしょう。

それではVueの下位エディションでは「何ができないのか?」をざっくりとまとめてみます。
現時点ではアーティストラインはVue 2015までしかリリースされていないので、機能の比較も2015で行っています。


■Vue Studio

Vue Completeと比較して以下の機能が使用できません。

  • EcoPainterモジュール
    vue_ecopaint
    Vueにはあらゆるオブジェクトに他のオブジェクトを植えるEcoSystemという機能があります。これは主に地形に植物や石といった自然に散在するものを形や大きさを変化させながら大量に配置したい場合に使います。
    その数は膨大で、1つの地形に数百万、ポリゴン数にして数百億といったオブジェクトを自在に配置でき、しかも操作レスポンスに影響がないくらいに軽いといった特徴があります。
    EcoSystemは基本的にパラメータによって制御するものですが、このEcoPainterモジュールがあればペンやブラシで絵を描くように自在に配置をコントロールできるようになります。
    実はEcoPainterの機能は後述のAdvancedGraph(関数エディタ)で代用することもできますが、AdvancedGraphモジュールもStudioには含まれていません。
    EcoSystem自体がエクスポート非対応なので、この機能はゲーム開発においては無くても困りませんが、テクスチャ作りでは使い道もあるかと思います。
  • KronosFXモジュール
    vue_kronos
    アニメーション時に各種パラメータの詳細なグラフ制御ができるようになるモジュールです。
    作ったオブジェクトを出力といった用途ではほぼ使い道はありませんが、アニメーションテクスチャやプリレンダの動画を作るならあった方が便利です。
  • AdvancedGraphモジュール
    vue_graph
    いわゆる関数エディタの機能です。
    Vueのマテリアル(質感)は基本的にプリセットを選んでパネル上の数値を変化させるだけでほとんどの表現ができますが、このモジュールがあるとそれぞれの内部の計算式の詳細な制御ができるようになります。もちろんオブジェクトの座標や角度、アニメーションの時間で変化させることもできます。
    Substance Designerで一躍有名になったプロシージャルマテリアルですが、Vueにはその機能がずっと昔から備わっています。
    このモジュールがあれば、より思い通りに見た目のコントロールができるようになるので是非使いたい機能です。
  • Exporterモジュール
    vue_exporter
    これがComplete一択と言わざるを得ない最大の理由です。
    Vueは他のツールで作ったオブジェクトを読み込むことはできますが、逆に書き出すにはこのモジュールが必要です。
    単に出力するだけではなく、ポリゴン数のコントロールも行えます。
    画像として遠景やテクスチャを作る目的であれば不要です。
  • Zephyrモジュール
    配置された植物(Botanicaモジュール対応オブジェクトのみ)を風で揺らすことができるようになります。
    単純な風ではなく、現実と同じようにエリアによって向きや強さが刻々と変化します。
    風というとアニメーション向けに思えますが、静止画においても絶大な威力を発揮します。
    野原や牧草地で草が波打つように揺れている画像はこのモジュールなくしてありえません。
    背景画像や植物のアニメーションテクスチャを作るならあった方が格段に表現の幅が広がります。

■Vue Esprit

Vue Studioと比べて以下の機能が使えません。

  • Botanicaモジュール
    vue_botanica
    自然な植物や岩等をコントロールするためのエンジンにあたります。
    単純な固定されたオブジェクトとしての木や花ならこのモジュールは不要ですが、その場合は100本植えれば100本すべて同じ形になってしまいます。
    Botanicaモジュールで使用できる植物や岩は指定範囲内で大きさや形をランダムに変化させることができます。
    時間で衰えさせたり、季節で花を咲かせたり枯らせたりといったこともできます。
    単に変化させるだけではなく、読み込んだ植物をアレンジして新しい植物を作ることもできます。PlantFactoryがあればゼロから自作することができます。
    植物のアニメーションテクスチャを作るなら必須です。
  • DeepAccessモジュール
    vue_deepaccess
    Espritではオブジェクトやマテリアルのリストが簡素化されていて細かなコントロールはできず、何をするにもオブジェクトやマテリアルを開かないとなりません。
    このモジュールがあれば、多くのことがリストから直接コントロールできるようになります。
    操作性に大きな影響があるので、このモジュールも必須といっていいでしょう。
  • LightTuneモジュール
    vue_lighttune
    照明の詳細な設定が可能になります。
    各光源で対象となるオブジェクトを選択したり、距離によって色を変化させたり、通常のソフトシャドウよりも高速なアルゴリズムが使用できたりします。
    ゲーム開発ではプリレンダリングしないのであればそれほど使い道がない、あれば便利だけどなくても困らないモジュールです。
  • HyperVueモジュール
    vue_hypervue
    ネットワークレンダリングが可能になります…が、高速なPCを何台も用意しなければ無意味なので、これはなくてもいいでしょう。
  • EcoSystemモジュール
    vue_ecosystem
    Vueの特徴の一つである、オブジェクト自動散布機能です。詳細は前述のEcoPainterで説明した通りです。
    これがあれば遠景の森林や地形のテクスチャも簡単に作れるでしょう。
    小石が敷き詰められた川や庭園等の表現でも大活躍します。
    形を変化させるのではなく、単に大きさや向きを変えて散布するのであれば、このモジュールが無くても通常の散布機能が使用できます。ただし通常の散布ではオブジェクトの実体が配置されるため数が多いほど重くなります。

以上がVue各エディションの違いです。

Vueをゲーム開発で使うなら、最も活躍するのは遠景や天空でしょう。
全天球のパノラマレンダリングやHDR出力もできるので、イメージベースドライティング(IBL)の画像作成にも使えます。

レンダリングは大気までも計算されるので、フォトリアルな地形のテクスチャ作りにも有効です。

その反面、オブジェクトのエクスポートに関してはゲーム作りでは微妙なところです。
Vueの地形作成機能はとても強力ですが、先に述べた通りUnityの地形エディタでほとんどは代用できます。
設計通りの複雑で精密な地形を作るなら、Vueを使う価値はあるかと思います。

Completeの価格に見合う作業ができるかどうかが判断の分かれ目になるでしょう。
数年前であれば遠景や天球の画像を素材として販売するといった方法で費用を回収することもできましたが、近年はフリー素材だけでも大量に配布されているのでそれも難しくなってきています。

買うなら最低でもComplete、ただし無理して買うほどでもない…といったところだと思います。

次回はPlantFactoryについてです。
PlantFactoryはゲームでもかなり使えます。